キャンプと防災は似ている?
キャンプと防災は、よく結び付けて語られます。
確かに、似ているところは多くあります。キャンプで使っている道具が、災害時にも活用できる場面も少なくありません。
例えば、
- 電気や水道など、普段の生活インフラが使えない
- 限られた道具で生活する
- 屋外や避難先など、普段とは違う環境で過ごす
- 自分で生活するための環境を整えなければならない
こうした共通点があるからこそ、キャンプギアが防災に役立つ場面は多いのだと思います。
でも僕は、キャンプと防災は同じものではないと考えています。
「終わりが見えるキャンプ」と「終わりが見えない避難生活」
普段、キャンプに行くときは、1泊や2泊というように、ある程度終わりが見えています。
多少つらいことや不便なことがあっても、
「まあ、明日には帰れるし」
そう思って我慢できることもあります。
キャンプが終われば家に帰り、いつもの生活に戻ることができるからです。
一方で、避難生活はいつ終わるのか分かりません。
状況によっては、長期間にわたって避難生活が続くこともあります。
一晩なら我慢できる不便でも、それが何日も、何週間も続けば、身体的にも精神的にも大きな負担になります。
実際に厚生労働省も、避難所生活が長期に及ぶことでさまざまな健康への影響が懸念されるとして、十分な睡眠・休息や身体を動かすことなどを挙げています。
だから僕は、キャンプで培ってきた「少しでも快適に過ごすための工夫」を、防災にも取り入れる意味があると考えています。
先日書いた防災用寝具の記事も、その一例です。
キャンプでは「少しでも快適に眠りたい」という理由で選んでいたマットや寝袋が、災害時には「身体を休めるための道具」として別の意味を持ちます。
災害時の睡眠を守る防災用寝具|キャンプ用品を活用して睡眠環境を整える
だからこそ快適性が重要
では、なぜ僕は防災に「快適性」を取り入れることが大切だと思うのでしょうか。
防災というと、まず「命を守るために必要なもの」を考えると思います。
水や食料、明かり、情報を得るためのスマートフォンやモバイルバッテリーなど、災害が起きたときに最低限必要になるものを備えておくことは、もちろん大切です。
でも、避難生活が長期化したときに必要になるのは、それだけではないと思っています。
避難生活では、普段とは違う環境で長い時間を過ごすことになります。
座り続けたり、十分に身体を動かせなかったり、慣れない場所で眠らなければならなかったり。
そうした小さな負担が積み重なっていけば、それだけ身体にも心にも負担がかかります。
だから僕は、
「最低限、生活できればいい」だけではなく、「少しでも負担を減らして過ごす」ことも防災では大切なのではないか
と考えています。
そして、そこにキャンプギアの「快適性」を活用できるのではないでしょうか。
快適な寝具は「贅沢」ではない
例えば寝具です。
キャンプでは、地面の硬さや冷気を避けるためにマットを使います。
僕自身、キャンプで寝ることを考えるようになってから、マットの厚さや幅、寝心地をかなり意識するようになりました。
これは災害時でも同じです。
避難先で十分な寝床を確保できない状況になったとしても、キャンプ用のマットや寝袋があれば、身体を休めるための環境を整える助けになります。
「眠ることができればいい」と考えるのではなく、
「少しでも身体を休めることができる環境を作る」
と考える。
僕は、これも防災の一つだと思っています。
身体の負担を減らすということ
快適性について考えるとき、僕がもう一つ重要だと思っているのが、身体への負担です。
避難生活では、普段の生活とは違う姿勢で長時間過ごすことになったり、身体を動かす機会が減ったりすることがあります。
厚生労働省も、避難所での生活は普段と異なることから不活発になりやすく、心身の機能が低下する可能性があるとして、毎日の生活の中でなるべく身体を動かすことや、避難所でも楽しみや役割を持つことを勧めています。
厚生労働省「からだを動かしましょう!~避難所で過ごされる方へ~」
また、エコノミークラス症候群についても、長時間同じ姿勢で足を動かさないことなどによって血行不良が起こり、血栓ができるリスクがあるとされています。予防のためには、定期的に身体を動かすことや、十分な水分を取ることなどが重要です。
だからこそ、避難生活では「何を持っているか」だけではなく、「どのような環境で過ごすか」も考えておきたい。
もちろん、キャンプギアを使ったからといって、こうした健康上のリスクを防げるわけではありません。
ただ、
- 座る
- 横になる
- 眠る
- 身体を動かす
といった基本的な行動を、少しでも無理なくできる環境を整える。
そのためにキャンプギアを活用することには、意味があるのではないかと僕は考えています。
心の負担も減らしたい
そして、僕が防災について考えるとき、身体の負担と同じくらい大切だと思っているのが、心の負担を減らすことです。
災害が起きれば、それだけで大きなストレスになります。
住み慣れた家を離れなければならなかったり、先の見えない避難生活を送ることになったり。
厚生労働省も、災害のような大きなストレスにさらされることで、不安や心配などの反応が現れることがあるとしています。
そんな状況で、「少しでも気持ちを落ち着けられるもの」が身近にあることは、決して無駄ではないと思います。
ここでもキャンプが役立つのではないでしょうか。
例えば僕なら、キャンプで使っているお気に入りのチェアに座って、コーヒーを飲む。
ランタンを灯す。
いつもキャンプで使っている道具を眺める。
もちろん、災害直後の緊迫した状況では、そんなことを考える余裕すらないかもしれません。
でも安全が確保され、避難生活が長期化したとき。
そんな小さな「いつもの楽しみ」が、少しだけ気持ちを楽にしてくれることはあるのではないでしょうか。
「楽しむ」ことも、負担を減らす一つの方法
災害時に「楽しむ」という言葉を使うと、不謹慎に感じる人もいるかもしれません。
僕も、災害直後からキャンプを楽しもうと言いたいわけではありません。
ただ避難生活が長く続くのであれば、毎日をただ我慢して過ごすことが本当に良いのだろうか、と僕は思います。
キャンプにはただ寝泊まりするだけではない楽しさがあります。
お気に入りの道具を使うこと。
温かい飲み物を飲むこと。
外の空気を感じること。
火を眺めること。
誰かと話すこと。
普段のキャンプで僕たちが何気なく楽しんでいることの中には、特別な設備がなくてもできるものがあります。
もちろん、災害時には安全や周囲への配慮が最優先です。
そのうえで、できる範囲でキャンプの「楽しむ」という要素を取り入れる。
それによって、避難生活の中に少しでも普段の生活に近い時間を作ることができれば、心の負担を減らすことにもつながるのではないか。
僕はそう考えています。
キャンプギアを「防災用品」として見直してみる
ここまで書いてきたことを考えると、僕はキャンプギアを「防災用品」という別のカテゴリーとして考える必要はないと思っています。
普段キャンプで使っている道具を、
「災害が起きたときにも使えるだろうか?」
という視点で、一度見直してみる。
例えば、
- LEDランタンなら停電時の明かりとして
- ポータブル電源ならスマートフォンなどの電源として
- クーラーボックスなら停電時の保冷手段として
- マットや寝袋なら避難生活の寝具として
- チェアなら床に座り続けることを避けるための道具として
使えるものがあります。
すべてのキャンプギアが防災に適しているわけではありません。
また、災害の種類や避難する場所によって、必要なものも変わります。
だから「キャンプ用品を持っていれば防災は大丈夫」という話ではありません。
そうではなく、
「自分が普段使っている道具には、非常時にどんな使い道があるだろう?」
と考えておく。
それだけでも、防災について考えるきっかけになるのではないでしょうか。
キャンプをしていること自体が、ひとつの備えになる
そして最後に、もう一つ僕が思っていることがあります。
それは、キャンプで身につけた経験そのものも、防災につながるのではないかということです。
キャンプをしていると、普段の生活では当たり前に使っているものが、当たり前ではなくなります。
電気がなければどうするか。
水がなければどうするか。
暗くなったらどうするか。
寒かったらどうするか。
雨が降ったらどうするか。
キャンプでは、そうしたことを自分で考え、持っている道具を使って対処します。
もちろん、実際の災害はキャンプとはまったく違います。
キャンプ経験があるからといって、災害に強くなるわけではありません。
それでも、
「普段とは違う環境で、自分で考えて生活する」
という経験は、いざというときに役立つ部分があるのではないかと僕は思っています。
だから僕は、キャンプを単なる趣味として終わらせるのではなく、そこで得た経験や知識を、普段の生活にも活かしていきたいと思っています。
まとめ
キャンプと防災には、似ているところがあります。
だからこそ、キャンプギアを防災に活用することには大きな意味があります。
でも、キャンプと避難生活は同じではありません。
キャンプには終わりが見えています。
「明日には家に帰れる」と思えるからこそ、多少の不便も楽しむことができます。
一方で、避難生活はいつ終わるのか分かりません。
だからこそ僕は、防災について考えるとき、
「最低限、生きるために何が必要か」だけではなく、「どうすれば少しでも負担を減らせるか」
という視点も大切にしたいと思っています。
身体の負担を減らす。
心の負担を減らす。
そして、できる範囲で小さな楽しみを作る。
そのために、僕たちキャンパーが普段使っているキャンプギアや、キャンプで培った経験を活かせるのではないでしょうか。
防災の日をきっかけに、皆さんも一度、自分のキャンプ道具を「防災」という視点から見直してみてはいかがでしょうか。
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