はじめに
令和8年熊本地震をはじめ、近年は全国各地で地震や豪雨などの自然災害が相次いでいます。
ニュースを見るたびに「防災用品を準備しなければ」と思っても、何を揃えればいいのか分からず、そのままになってしまう方も多いのではないでしょうか。
そんな中で近年注目されているのが、「キャンプ用品を防災に活用する」という考え方です。
実際に、LEDランタンやポータブル電源、寝袋などは、キャンプだけでなく災害時にも役立つ場面があります。
しかし一方で、
「キャンプ用品さえあれば防災対策は十分なの?」
という疑問もあります。
僕自身、長年キャンプを楽しんできた経験から言えば、答えは「Yesでもあり、Noでもある」です。
この記事では、防災とキャンプ用品の関係を客観的に整理しながら、「なぜキャンプ用品が防災と相性が良いと言われるのか」、そして「どのように活用すべきなのか」を考えていきます。
キャンプと防災には多くの共通点がある
キャンプと災害はまったく違うもののように思えますが、生活環境だけを見ると多くの共通点があります。
例えば、
- 電気が自由に使えない
- 明かりを自分で確保する必要がある
- 温かい食事を自分で用意する
- 限られた水を大切に使う
- 限られた寝具で眠る
こうした状況は、キャンプでも災害時でも共通しています。
だからこそ、
- LEDランタン
- ポータブル電源
- モバイルバッテリー
- 寝袋
- マット
- クッカー
など、多くのキャンプ用品が防災用品としても活用されています。
しかし、キャンプと災害は決して同じではありません
ここで勘違いしてはいけないことがあります。
キャンプは「楽しむため」に行くものですが、災害は突然やってきます。
| キャンプ | 災害 |
|---|---|
| 行く日を選べる | 突然発生する |
| 必要な荷物を準備できる | 持ち出せる物が限られる |
| 天候を確認できる | 状況を選べない |
| 楽しむことが目的 | 命を守ることが目的 |
つまり、
キャンプ用品は災害時に役立つことはあっても、キャンプと災害を同じように考えてはいけません。
とはいえ一言に防災というと「命を守るために最低限必要なもの」に意識が行きがちです。
しかし避難生活が長期化すれば「生きるための最低限」だけではなく、少しでも身体的・精神的な負担を減らす工夫も重要になります。
内閣府「特集 災害の備え、何をしていますか」
こちらのページにて災害の備えについて様々な紹介がされていますが、
その中で「3日以上、さらに避難生活が長引いた場合にできるだけ快適に過ごすためのもの」の備えが紹介されています。
また非常食だけでは飽きが来るため、レトルト食品なども備蓄し期限が迫ったものは普段の生活やキャンプで使用して入れ替えるフェーズフリー(後で紹介)も示されています。
キャンプ経験者と未経験者では評価が変わる
ここも非常に重要なポイントです。
キャンプ経験者の場合
キャンプをしている人は、
- 道具の使い方を知っている
- バッテリー管理に慣れている
- 必要な明るさを体感している
- 寝袋やマットの使用感を理解している
という大きな強みがあります。
つまり、普段から使い慣れている道具を、そのまま災害時にも活用しやすいのです。
キャンプ未経験者の場合
一方で、キャンプをしたことがない人にとっては、キャンプ用品を防災目的だけで購入することが必ずしも最適とは限りません。
例えば寝袋やマットは、実際に使ってみなければ自分に合っているか分からないものです。
幅が狭く寝返りが打ちにくかったり、マットが薄く身体が痛くなったり、想像していたより寒かったりすることもあります。
そのため、防災用品は「持っていること」だけでなく、「普段から使い慣れていること」も大切になります。
消防庁が公開している「地震防災マニュアル」にも、備蓄品の中から避難生活に必要なものを選ぶ、という考え方が示されています。
普段使い慣れているキャンプ用品を防災に役立てる、という意味では、この考え方はキャンパーにも当てはまります。
ただし、だからといって、キャンプをしない人までキャンプ用品を使い慣れておくべき、というわけではありません。
大切なのは、自分の生活スタイルの中から、避難生活に役立つものを考えておくことです。
そう考えれば、普段からキャンプ用品を使っているキャンパーにとっては、手持ちの道具やその使用経験を防災に役立てることに大きな意味があります。
特に睡眠環境は、避難生活が長引いたときの身体への負担にも関わります。
キャンプでは、コット、マット、寝袋などをそれぞれ単体で考えるのではなく、自分の身体や使用環境に合わせて組み合わせることで、より快適に眠れる環境を作ることができます。
僕はこの組み合わせを「就寝システム」として考えています。
キャンプで自分に合った就寝システムを作っておけば、災害時にもその経験を活かすことができます。
自分に合ったキャンプ用の就寝環境をどのように考えるのかについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
「フェーズフリー」という考え方
日常時(平常時)と非常時(災害時)を区別せず、普段から使っているものを災害時にも活用する考え方があります。
キャンプ用品は、この考え方と非常に相性が良い道具です。
例えば、
- 普段はキャンプで使うLEDランタンが停電時にも役立つ
- キャンプで使っているポータブル電源が停電時の電源になる
- 寝袋やマットが避難生活で睡眠を支えてくれる
このように、普段から使い慣れていることが災害時の安心にもつながります。
こうした考えに近いものとしてフェーズフリーという考え方があります。
内閣府も2026年5月に公表した資料の中でフェーズフリーを取り上げており、日常の中に防災の価値を組み込み、非常時にも戸惑うことなく機能させられる環境を整える考え方として紹介しています。
詳しくは内閣府の「それ実は防災なんです」をご覧ください。
キャンプ用品だけでは防災は完結しない
ここで一つ誤解してほしくないことがあります。
キャンプ用品は、防災用品の代わりになるものではありません。
例えば、
- 飲料水
- 非常食
- 常備薬
- 携帯トイレ
- 家族構成に応じた備蓄品
などは、別途準備しておく必要があります。
防災用品の基本的な備えについては、内閣府や消防庁などの公的機関が公開している情報を参考にすることをおすすめします。
キャンプ用品が防災に役立つからといって、キャンプ用品だけを揃えればいいわけではありません。
上記内閣府のサイトでは飲料水、非常食、常備薬、携帯トイレ等、キャンプ用品だけでは代替できない備えも必要だと記載されています。
つまり防災の基本を整えたうえで、キャンプ用品を「追加の備え」として活用するのが現実的なのです。
その上で、本シリーズでは「キャンプ用品だからこそ役立つ部分」に焦点を当てて解説していきます。
このシリーズで伝えたいこと
防災用品を紹介する記事は数多くあります。
しかし、僕がこのシリーズで伝えたいのは「おすすめ商品」だけではありません。
大切なのは、
「この道具が、災害時のどんな困りごとを解決してくれるのか」
という視点です。
例えば、
- 暗闇への不安を減らす
- 寒さや暑さによる身体への負担を軽減する
- 家族との連絡手段を維持する
- 少しでも安心して眠れる環境を作る
キャンプ用品は、災害時の生活を自宅と同じように快適にしてくれる魔法の道具ではありません。
しかし、身体への負担だけでなく、心の負担も少し軽くしてくれる可能性があります。
そして、それらの道具を普段から使い慣れていることは、非常時の落ち着いた行動にもつながります。
このシリーズでは、公的機関が発信する防災情報を土台としながら、僕自身がキャンプで実際に使用してきた経験を交え、「日常でも災害時でも役立つキャンプ用品」について、一つひとつ詳しく解説していきます。
次回予告
次回は、停電対策の中でも特に重要なポータブル電源について解説します。
- 本当に必要なのか
- どんな場面で役立つのか
- 容量はどれくらい必要なのか
- キャンプと防災、それぞれの視点から見た選び方
などを、実体験も交えながら詳しく紹介します。
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