災害への備えというと、水や食料、モバイルバッテリーなどを思い浮かべる方が多いと思います。
でも、実際に避難生活を考えてみると、意外と見落としやすいのが「眠るための環境」です。
普段なら当たり前に使っている布団やベッドが使えなくなり、硬い床の上で眠ることになるかもしれません。周囲に多くの人がいる環境では、自宅と同じようにゆっくり眠ることも難しくなるでしょう。
厚生労働省も、避難生活では十分な睡眠・休息を確保することが健康を維持するうえで重要だと案内しています。
厚生労働省「避難所生活で健康に過ごすため」
僕が「防災用の寝具」を考えるようになったきっかけ
僕自身、能登半島地震の被災地へボランティアに向かうという方から、寝袋選びについて相談を受けたことがあります。
その方は見た目を重視して寝袋を選ぼうとしていました。
でも、その時期に被災地へ向かうのであれば、僕はデザインよりも保温性などの性能を優先した方がいいと伝えました。
そして、もう一つ伝えたのが寝袋だけでは十分ではないということです。
寝袋で身体の上側を暖めることはできても、硬い床や床からの冷気を防ぐには限界があります。そこで、マットも一緒に使った方が身体を休めやすいと説明しました。
その後、その方が実際にどのような装備を選んだのかは分かりません。
ただ、この経験から僕は、防災用の寝具は「どの寝袋を買うか」だけで考えるものではなく、どんな場所で、どうやって身体を休めるのかまで考える必要があると感じるようになりました。
キャンプ用品は防災にも使える
キャンプ用品には、普段の生活環境が使えない状況でも役立つものがたくさんあります。
マットや寝袋はもちろん、コットや毛布、枕などもその一つです。
内閣府も、普段使っているキャンプ用品を災害時に活用する考え方を紹介しています。(bousai.go.jp)
また、普段から使っているものを災害時にも活用する考え方は、「フェーズフリー」とも相性がいいと思います。
僕自身も、キャンプ用品を防災用品として特別に保管するより、普段から使っているものをそのまま活用できる方が、無理なく備えられると考えています。
キャンプ用品を防災に活用する考え方については、こちらの記事でも紹介しています。
ただし、ここで一つ注意したいことがあります。
キャンプで快適な寝具が、そのまま避難生活でも最適とは限りません。
キャンプと避難所では「快適」の条件が違う
キャンプなら、自分が快適に過ごせることを優先して寝具を選べます。
多少音が出ても周囲に人がいなければ問題にならないこともありますし、快適さを求めてコットを使うのも選択肢です。
でも、避難所は多くの人が同じ空間で生活する場所です。
政府広報では、避難所の生活環境を考えるうえで、温度や湿度だけでなく、音量や振動などにも配慮する必要があるとしています。(gov-online.go.jp)
だから僕は、防災用の寝具を選ぶときには、
「自分が快適か」だけでなく「周囲に配慮して使えるか」
も重要だと思っています。
僕が防災用寝具で一番気にしたい「音」
今回、寝具を調べる中で僕が特に気になったのが「音」です。
例えば、
- 寝返りをしたときの生地の擦れる音
- マットが動くときの音
- コットのきしみ
- 寝袋のファスナーの音
- 夜中に寝具を動かす音
などです。
キャンプ場なら気にならない音でも、人がたくさんいる避難所では気になるかもしれません。
内閣府の避難生活支援に関する研修資料でも、寝床を整える際の要素として、音や振動の軽減が挙げられています。(bousai.go.jp)
ただ、ここで一つ勘違いしたくないのが、「ポリエステルだから音がする」という単純な話ではないということです。
同じポリエステルでも、柔らかな生地や起毛した生地なら、印象は変わります。
素材名だけで判断するのではなく、メーカーが静音性に触れているか、生地が柔らかいか、実際に音が出やすそうな構造になっていないかを見て選ぶ。
僕はこのくらいの考え方で十分だと思っています。
マットは「床から身体を守ること」と「音」の両方を考えたい
マットについて僕がまず重視したいのは、硬い床から身体を守れることです。
避難所では、体育館などの硬い床の上で長時間過ごす可能性があります。
内閣府の避難所に関する資料でも、寝床を整えることで床からの冷気を防ぎ、体温を維持し、睡眠の質を改善することが重要とされています。
そのため僕なら、キャンプ用としてもかなり厚めのマットを選びます。具体的には、10cmクラスも候補にしたいと思っています。
ただ、避難所で使うなら、厚みだけを見ればいいとも思いません。
寝返りをするたびに音が出るマットでは、周囲の人に気を遣うことになります。できることなら、床に対するクッション性と静音性の両方を備えたマットを選びたいところです。
厚みと静音性は、どちらか一方だけを選ぶのではなく、実際の使い方や持ち運びやすさも含めてバランスを取る。
その一例としてNaturehike Yugu C6.5を紹介します。
静音性を重視のマット「Naturehike Feather Bone C6.5(Yugu C6.5)」
具体例として僕が気になったのが、Naturehikeの「Yugu C6.5 インフレータブルマット」です。
厚みは6.5cmなので、僕が理想としている10cmクラスよりは薄めです。
それでも候補に入れたのは、メーカーが静音性を特徴として紹介しているからです。
防災用マットを選ぶなら、
厚みを取るのか、静かに使えることを取るのか。
その両方を見ながら、自分の使う環境に合うものを選ぶ。
僕なら、そんな考え方をします。
手持ちのマットなら「買い替えない」という方法もある
だからといって、防災のために新しいマットを買わなければならないわけでもありません。
すでにキャンプ用マットを持っているなら、僕ならまずそれをどう活用できるか考えます。
そこで使いやすいのが、敷きパッドやカバーです。
マットの上に敷きパッドやシーツを重ねれば、直接マットに触れずに済みます。
これなら、肌触りを変えたり、汗や汚れを受け止めたりできますし、冬なら保温感を補うこともできます。
さらに、生地同士の擦れが気になる場合には、音を和らげる工夫としても考えられます。
もちろん、敷きパッドを重ねれば必ず静かになるわけではありません。
それでも、今持っているマットをどう使えるかを考えるうえでは、試してみる価値のある方法だと思います。
これは防災だけでなく、キャンプでも使えるアイデアです。
寝袋は「暖かさ」と「生地」を見る
寝袋を選ぶときは、まず保温性を確認します。
僕が能登へ向かう方に保温性を優先するよう伝えたのも、まさにこの部分でした。
でも防災用として考えるなら、もう一つ気になるのが生地です。
寝返りをするたびに「シャカシャカ」と鳴るような生地より、柔らかな生地の方が避難所では使いやすいのではないか。
そこで僕は、内側に柔らかな布地や起毛素材を使った寝袋を候補にします。
寒い時期の具体例「LOGOS 丸洗いやわらか あったかシュラフ・0」
僕が候補として挙げたいのが、LOGOSの「丸洗いやわらか あったかシュラフ・0」です。
適正温度は0℃までで、表面と肌面の両方にやわらかなフランネルを使っています。丸洗いにも対応しており、ダブルファスナーで温度調整もできます。(logos.ne.jp)
僕がこの寝袋を候補にしたのは、暖かさだけでなく、生地の柔らかさや手入れのしやすさまで含めて考えられるからです。
起毛した柔らかな生地なら、薄手の化繊生地よりも摩擦音が気になりにくい可能性もあります。
これはメーカーが「静音性」を保証しているわけではないので、あくまで僕の見立てです。
夏は「寝袋を変える」のではなく、組み合わせる
防災用の寝袋というと、冬用ばかりに目が向きがちです。
でも、夏の避難生活では、今度は暑さや蒸れが問題になります。
そこで僕なら、夏用の寝袋を新しく買う前に、手持ちの寝袋にインナーシュラフを組み合わせる方法を考えます。
夏の具体例「冷感・吸汗 LOGOS インナーシュラフ」
LOGOSの「冷感・吸汗 LOGOS インナーシュラフ」は、Q-max値0.4以上の接触冷感生地を使ったインナーシュラフです。手持ちの寝袋に入れて使えるほか、単体ではブランケットとしても使え、丸洗いにも対応しています。(logos.ne.jp)
さらに、同シリーズにはインフレートマット用のカバーやエアマクラカバーもあります。(logos.ne.jp)
こうした製品を使えば、
手持ちの寝袋+冷感インナー
という形で、夏に合わせて寝具を調整できます。
僕はこうした「買い替えるのではなく、組み合わせる」という考え方が、防災用品では特に使いやすいと思っています。
防災なら「寝袋だけ」にしない
今回いろいろ調べて、僕が改めて感じたのは、寝袋だけでは睡眠環境は作れないということです。
硬い床があるなら、マットが必要です。
マットの表面が気になるなら、敷きパッドやカバーを重ねる方法があります。
寒ければ寝袋や毛布を追加し、暑ければインナーシュラフなどを使って調整する。
つまり、防災用の寝具は「これ一つあれば大丈夫」と考えるより、いくつかの寝具を組み合わせて考える方が現実的なのではないでしょうか。
内閣府の避難所に関する資料でも、毛布や布団だけでなく、段ボールベッド、畳、カーペットなど、さまざまな方法で寝床を改善する考え方が示されています。(bousai.go.jp)
だから僕なら、キャンプ用品だけに限定しません。
家庭で使っている敷きパッドや毛布なども含めて、今あるものをどう組み合わせるかから考えます。
季節によって考え方も変わる
災害は季節を選びません。
だから、寝具も一種類だけ用意して終わりではなく、季節に合わせて調整できるようにしておく方が安心です。
夏
暑さや蒸れを考えて、薄手の寝具や冷感インナーシュラフなどを組み合わせる。
冬
寝袋だけでなく、マットで床からの冷気を防ぐことも考える。
春・秋
毛布などを追加して、寒暖差に対応できるようにしておく。
こうして考えてみると、普段からキャンプで使っている寝具が、そのまま防災対策にもつながっていきます。
防災用寝具は「何を買うか」より「どう使うか」
僕が今回の記事で伝えたいのは、
「この商品を買えば安心です」
ということではありません。
キャンプ用のマットがあるなら、それを防災にどう使うのか。
寝袋があるなら、どんな季節に使うのか。
手持ちの寝具だけでは足りない部分を、敷きパッドやインナーシュラフなどでどう補うのか。
そして避難所で使うのであれば、自分だけでなく周囲の人にも配慮できるか。
そうやって考えていくと、防災用の寝具は「防災専用品を揃える」というだけではなく、普段使っているものを組み合わせて作っていくものだと思います。
まとめ
災害時の備えというと、食料や水に目が向きます。
でも、避難生活を考えるなら、身体を休めるための寝具も準備しておきたいものです。
僕が特に重視したいのは、床から身体を守れることと、避難所でできるだけ静かに使えること。
そして、それを一つの寝具だけで解決しようとしないことです。
厚みのあるマットを使う。
手持ちのマットに敷きパッドを重ねる。
寒い時期には保温性の高い寝袋を使い、暑い時期にはインナーシュラフを組み合わせる。
そんなふうに、今持っているキャンプ用品や家庭用寝具を組み合わせながら、自分に合った睡眠環境を作る。
それが僕にとっての、防災用寝具の考え方です。
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